塩を中心に、古代〜現代まで歴史をたどっていく絵本。
旅の始まりは、筆者と岩塩との出会い。そして、塩の科学的な性質が紹介され、古代〜現代へむかって世界各地の塩の利用法(政治、軍事、経済、保存など)が楽しくユーモアに富んだ絵で紹介される。
巻末には塩を中心にした歴史年表もあり、歴史は塩によってつくられていることがよくわかる。
人間中心の歴史を紹介する方法に慣れているので、塩が中心で世界が回っているとは驚きだ。しかし、生物は塩がなければ生きられず、結局、生活必需品の「塩」がとれる地域と不足している地域の人たちが、塩を中心に経済をまわし、流通させ、戦争や政治のネタにし、研究し、いろいろに活用している様子を見ると、筆者の独自の視点が納得できる。
歴史は、塩が作った。
人間は塩に振り回されている。人間が塩を振りかけて、塩を支配しているように見えるが、実は塩に支配されているのだ。
今は塩が簡単に手に入るようにはなったが、今度は「塩分の取りすぎ」などの健康問題や環境破壊など別の問題が持ち上がっている。だから結局、塩には勝てないのだと思い知らされている。
人間中心という視点を変えることにより、新しい発見があり、人間はもっと謙虚に生きなければならないと反省できる絵本。
単に、ユーモアに満ちた漫画として楽しんでいるだけで、世界史が頭に入るという珍しく便利な本でもある。大人の方も是非お読みください。歴史が苦手な人にも、興味をもってもらえそうな面白いエピソードが満載。