私が幼稚園の頃、先生が毎日少しずつ読んでくださいました。私は次のお話が待ち遠しく、絵本の時間をわくわくして待ちました。全部読んでくださった後も、もう一回読みたくて、「本当におもしろいんだから!」と母にねだって買ってもらった本です。
大人になって、子どもたちと一緒にもう一度読みました。子どもの時、わくわくしていたのは、「もり」という場所への憧れだったのではないかと思います。近くに、「山」はあっても「もり」はありません。子どもの読むお話の中には、「赤ずきんちゃん」「白雪姫」「ヘンゼルとグレーテル」…数え切れないほどの「もり」が出てくるというのに。そこでは、おおかみが住んでいたり、魔女が出てきたり、そして、このお話では「へなそうる」というとっても不思議な、だけど人懐っこい動物に出会うことができます。次の日に幼稚園から帰ってもう一度森へ行ったときも、同じ場所にちゃんといるなんて…!
近くに「もり」さえあれば、へなそうるに会えるかもしれないのに…。と、現実と空想を行き来していた記憶をはっきりと覚えている、大事な思い出の一冊です。