紅葉の綺麗な山道をのどかにバスが昇って行く表紙絵に惹かれ読みました。
鼻先の長い昔のバスです。
一日にへんしか通らないバス。
朝、村から町へ。
夕方、町から村へ。
途中、乗りたい人は手を挙げれば、どこでもバスは止まってくれます。
ある朝いつものように、村から出たバスに、峠にさしかかったところで、男の子が手を挙げ、のってきました。
でも、男の子は、お金を持っていませんでしたが、…。
昭和初期から、二・三十年の頃のことでしょうか。
バスには、切符を切る車掌さんが。
帰りのバスには、明日の結婚式(祝言)のため、つのかくしのお嫁さん、そしてその一行も。
服装ひとつみても、バスの棚に上がっている風呂敷包みの荷物にも、時代を感じてしまいます。
帰りの雪化粧した山の様子も美しい。
雪で動けなくなりそうな山道が、雪かきされていて、読んでいて驚きでした。
最後の、おばあさんへの手紙で、ポッと心が温かくなりました。
今の時代無くしてしまった、ゆっくりとした時間の流れが、人々の心の交流をおおらかに優しくしているように思えました。