去年も1月ごろ娘に読み聞かせていました。
クリスマスにまつわるお話なのですが、あまりに長くて一晩で読みきれず、毎晩少しずつ読みすすめているからです。
クリスマスイブのおもちゃ屋のショーウィンドウで、自分で遊んでくれる子供たちを切望するおもちゃたちの描写からはじまります。
中でもお人形のホリーの願いは切実でした。
真っ赤なドレスに緑のペチコートを着たホリーは、クリスマス以外には売れないでしょう。
意地悪なフクロウのアブラカダブラが言います。
「おくらってわけだ。」
「わしと一緒にほこりにまみれて、誰にもかえりみられず」
でもホリーは不安をこらえて必死で願い事をします。
自分を可愛がってくれるたった一人のクリスマスの女の子を。
所はかわって、クリスマス前夜の孤児院です。
みよりのない子供たちはクリスマス休暇に自分たちを預かってくれる親切なおじさまやおばさまたちの家に向かいますが、アイビーだけは預かり手が見つからずたった一人で汽車に乗って幼子の家に行かなくてはなりません。
ちくちくする胸の痛みをおさえてアイビーはつぶやきます。
「おばあちゃんの家に行くんだもん。」
(おばあちゃんなんていないのに。)
そしてコートに留められた行き先を書いた紙を引きちぎり、見も知らないアップルトンという町で降りてしまいます。
その町、アップルトンの市ではクリスマスの買い物をする人で賑わっていました。
ジョーンズさんの奥さんは、おもちゃ屋のショーウィンドウでお人形のホリーを見てクリスマスを祝う気持ちがわいてきました。
もう長いことツリーを飾っていません。
そして市場にもどり、もみの木、キャンドル、キャンドルどめ、ガラスの飾り玉などを買い求めます。
警察官のジョーンズさんはそんな妻を見て「一体どうしたんだね。」とやさしく問いかけます。
今日は一晩中仕事をしなくてはなりません。同僚が二人も病気で休んでいるからです。
「おいしい朝ごはんを用意しておいてくれ。」と言い置いて仕事に出かけて行きました。
クリスマス人形のホリー、孤児院の女の子アイビー、ジョーンズさんの奥さん、おもちゃ屋のお手伝いの男の子、みんなの気持ちが錯綜して、いったいどうなるのか結末を知っていてもはらはらドキドキします。
ねがいごとをすること。
あきらめないで心から強く願えば、願い事はかなう。
思いもかけず、まるで歯車がまわるようにいろんな思いがかみ合って美しい結末へと導かれていく。
その手腕は見事としか言いようがありません。
さすが屈指のストーリーテラー、ルーマー・ゴッデンです。
また挿絵を手掛けたバーバラ・クーニーもアメリカを代表する挿絵画家の一人です。
とても美しい絵で、丁寧に描かれた町の様子や感情を抑えた人物の表現に想像の翼が広がります。
読んで聞かせるのは本当に大変なんですが、毎年読みたくなりますね。
娘は、身寄りのない子供のことが気になってしょうがない様子。
「お父さんやお母さんが死んじゃって、世話してくれる人がいない子供が行くところはなんていうんだっけ。」と、孤児院のことを何度も聞いてくるのでそのたびに「孤児院ていうところだよ。」と説明しています。
確かに子供にとっては大問題ですもんね。
何度読んでもジーンとして、最後の場面では涙をこらえながら読み聞かせています。