【内容】
田舎のおじいさんが、甘くて大きなかぶを植えた。かぶはおじいさんの期待以上に元気に育ち、とてつもなく大きくなった。いざ収穫しようとすると、これがなかなか抜けない。おじいさんはおばあさんを読んできて、おばあさんは孫を読んできて、孫は犬を読んできて…
1962年、月刊「こどものとも」で発行されて以来、版を重ねてロングセラー。
独特の繰り返しのリズムが楽しい、ロシア民話の絵本。
訳:内田莉莎子 画:佐藤忠良
【感想】
子どもの頃に読んだ時は、意外とリアルな絵がやや怖かったので印象に残った。大人になってから読んでみたら、気の利いた言葉のリズムと、おじいさんのファンキーな仕草が素敵だと気付いた。出会った頃は、良さがわかっていなかったなあ…
この絵本の見どころの1つは、おじいさん。
このおじいさん、真面目な顔をして、意外とファンキーでチャーミング。そして、自分の欲望に忠実です。人生を十分に楽しんで、更に晩年、「おおきなかぶ」で絵本デビューしてロングセラー。財運も仕事運も、家族運もあるスゴイおじいさんです。
とにかく、どこから仕入れてきたのか?あの巨大化するかぶ。
そして、年の割には元気過ぎて、アクロバティックな動作もお手の物。ロシアの伝統的なダンスで鍛えた足腰で、地面と並行になるまでかぶをひっぱる離れ業。一家はユーモアも忘れない。休憩中のだらけっぷりと、仕事中の真剣さのコントラストがまた最高。常にカメラを意識しているプロ根性です。
あと、ナイショだけど、ここの家の猫は、妖怪かもしれない。犬もネズミも動物っぽい仕草だけど、猫だけ人間っぽい動作。魔力を感じ…他の物語も出来そうだ。
さておき、ツッコミどころが満載なので、是非とも何度でも読んで、目ん玉を皿のようにして、大人げなくつっこんでもらいたい。きっと絵本の人たちも喜ぶはず。
絵本の登場人物の顔の表情はあまりかわらないのに、体がその場の気持ちを実に雄弁に語っている。これは、絵描きさんが、彫刻家でもあったことと関係があるように、私は勝手に思っている。きっとこの人も人生を大いに楽しんだのだろう。なんだか幸せになった。