サンドヒルで噂される立派で美しい鹿をしとめようと、
若者が猟銃をかついで山へ出かけていきます。
その出だしだけで、現代とは違う生活の一端がうかがえます。
今の子供だったら、鹿をしとめてどうするのかは分からないかもしれませんが、
当時の人達からすると、狩猟が楽しみだけで行われていたのではないというのが行間から感じ取れます。
追い続けるうちに若者の心境が変化していく様子も見られ、
シートン動物記は動物の生態や強さ、美しさを話の中心にしているにもかかわらず、
自然や動物と人間との関係、時には人間の傲慢さも垣間見えるのです。
この『サンドヒルのおじか』は、人間対動物の攻防の色合いが特に強いのですが、
読後はすがすがしい気持ちになります。