毎年敬老の日が近づくと、読書推進運動協議会というところから、敬老の日に合わせた「読書のすすめ」というリーフレットが発行されます。
そこで紹介されている本の中の一冊に、角野栄子さんの『月さんとザザさん』という本がありました。
角野栄子さんといえば、『魔女の宅急便』などで知られる児童文学者で、児童書のノーベル賞ともいわれる国際アンデルセン賞も受賞していています。
だからでしょうか、この本はジャンルでいえば児童文学に区分されるのでしょうが、それを敬老の日の対象になるであろう読者に推薦しているのだから、選んだ人に拍手を送りたくなります。
児童文学だからといって、大人が読んではいけないという決まりはないし、ましてや少し大きめの活字は年老いた読者にはうれしい。
「ザザさんはおばあさんです。」という一文から、この物語は始まります。
ザザさんは朝から晩まで文句ばかりいうひねくり者で、ついには住んでいる「スミコさん」という名前の家まで家出してしまうくらい。家に名前があったり、家が家出したり、そんなことあるわけないと思ったら、楽しい物語に入っていけません。
そんなザザさんに空の月が話しかけてくれます。
月さんの話を聞くことで、次第にザザさんの心はほぐれていきます。
幼い頃の「父さんのいす」と出会ったり、そこで聞いた子守歌を思い出したりします。
一時期「玄冬小説」という言葉が流行ったことがありました。歳をとるのも悪くない、と思えるような小説をいったようですが、さしずめ角野さんのこの物語は「玄冬ファンタジー物語」といえそうです。