新美南吉さんの、やさしく美しい文章は、とても読みやすく、心にじんわりと染み込みます。また、黒井健さんの繊細で、やさしいタッチの美しい絵は、本当にこの物語にピッタリで大好きです。
人間の所へ、手袋を買いに行った子狐のお話です。
狐版の初めてのお使いに、母狐の気持ちになって、ドキドキしてしまいます。母の言いつけをうっかり忘れて、人間の手ではなく、狐のままの手をお店の人に見せてしまった時には、本当にハラハラしてしまいました。
子狐は、あどけなく、純粋な心の持ち主です。帰り道、人間の親子が、あまりの寒さに狐の子を思って心配する声を聞きつけて、人間とは、優しいものなのだと信じます。その報告を受け、母狐は、
「本当にそうなのかしらね。」
と、一言。この言葉が、なんだかずしりと心に突き刺さりました。
だって、この世の中、残念なことに、いい人間ばかりではないという現実があるからです。
実際、子供を一人で近くの公園で遊ばせるだけで、心が苦しくなるくらい心配でなりません。(もし、連れて行かれたら・・・。)
しかし、この本を読んだ私達だけでも、この子狐の信頼を裏切ることなく善良な人間でありたいと思わせられます。