スタイグさんの絵本では『ロバのシルベスターとまほうの子石』『歯いしゃのチュー先生』が好きです。今回、絵本以外の作品を初めて読みましたが、これも良かったです。深いです。
身に覚えのない盗人に仕立て上げられ、その場から逃げ出した主人公ガーウェインと、盗んだ張本人ネズミのデレックが出会った場面では、「深い」という思いはマックスになりました。
「許す」ことが、いかに許す本人の心を軽くするか。そして心が和らいで、許そうと思うに至るその過程(実は一瞬の出来事!)のこと。さらに「もういちど、みんなをすきになることはできましたけれど、みんなの欠点がわかったので、こんどは、かしこいやりかたで、みんなをすきになりました」というくだり!
悪いことをするつもりではないのに、ちょっとした気のゆるみ、心の弱さから罪を犯してしまうことの恐ろしさ。時間をさかのぼって、やり直したいと思ってもそれはできない現実の重さ。罪を犯した人、濡れ衣をきせられた人、信じたい人を信じることができない周りの人たち、彼らみんなの動揺・・・。
たくさんのことが、短いお話の中で子どもに伝わるように語られていて、スタイグさんの作家としての実力を改めて感じました。スタイグさんの作品をもっと読みたくなりました。
楽しく読んで、かつ、いろんなことを考えさせられる本で、子どもたちにおすすめです。感想文を書く宿題にも向いている本だと思います。