最初は、よくある感じの「あなたは大切だよ」系の絵本だと思いました(そういう系の絵本もみな素晴らしいのですが)が、何度も読み返すうちに、類書の中でもとりわけ素晴らしい本だなと思うようになりました。
特徴的なのは、まず、直接的すぎないから、柔らかく受け止めることができること。
そのしかけの1つ目は、おばあちゃんから孫への手紙という形式になっていることです。親から言われた言うことを聞かなくても、おばあちゃんから言われたことなら聞くという人もいるのではと思いますが、そういう感じです。
2つ目は、クマの絵であること。人間の絵だとまた、うちの場合と違うとかで受け止め方が変わったりするかもしれないですが、人間でないことで普遍的になっていると思います。
(逸れますが、こんなぬいぐるみみたいなクマのおとうさんが、子どもができたとわかったところでガッツポーズしていたり、端々かわいいです)
読んでいてすごいなと感じたのは、ある時は親目線で、ある時は子ども目線になって読むことができること。自分は出産経験があるので、最初は親目線で読んでいましたが、あるとき、自分の親もこうして自分を待ってくれたんだと気付き、有難い気持ちになりました。そういう意味でも普遍的に読まれうる名作だと思います。親は子どもを授かったときを思い出し、祖父母は書き手の気持ちで、子どもは親への感謝のきっかけに…そして、誰もは最初は「子ども」だったわけですよね。
1つ注意することがあるとしたら、望まれない出産とか、親のいない子どもたちにはどう手渡したらいいか…ということくらいでしょうか。これは私が答えが出せていない点です。