日本ではドイツの児童文学者ケスナーが発表したこの作品のタイトルをつけた児童文学向けの雑誌まで出ているくらい、児童文学の古典にして名作の評価が高い作品である。
この作品が書かれたのは1933年、ドイツではナチスが政権についた年で、出版も厳しい状況にあったという。
それでも、この作品が戦時下も、そして戦争が終結したあとも、あるいは世界が経済至上に邁進した時であっても、長く読み継がれてきたのであるから、それは児童文学の域を超えて立派に古典文学として評価されているといっていい。
物語の舞台は、ドイツのギムナジウムの寄宿学校。
クリスマスを前にした数日間の出来事が描かれる。
主な登場人物は、5人の少年。「飛ぶ教室」というのは、この5人がクリスマスのパーティに公演しようとしている演劇のタイトル。
5人の少年を中心に、他校との決闘騒ぎや仲間のうちの一人で弱虫と思われていたウーリの無謀な行動、少年たちを温かく見守る「正義さん」と呼ばれる教師、その「正義さん」が少年時代の友達との再会、と物語は多層的にできている。
中でも、リーダー格のマルティンが貧しさゆえにクリスマス休暇に帰省できなくなるエピソードは多くの読者の心をうってきたに違いない。
そして最後には流れ星に家族や友人、教師たちの幸せを願う少年の姿は、やはりこの物語がクリスマスなればこその作品だと思わざるをえない。