絵本作家・あべ弘士さんの作品が好きです。
あべさんは、元旭山動物園の飼育員をされていた経験を活かして
代表作の『あらしのよるに』をはじめ、動物たちを生き生きと表現できる人気絵本作家です。
そんなあべさんの作品群からすると、
この『ギアナ・夜間飛行』は異色作といえます。
何しろ、動物たちがほとんど登場してこないのですから。
タイトルにある「ギアナ」は、南アメリカ大陸北部に位置するギアナ高地のこと。
あべさんがこの高地を旅して、そこから生まれたのがこの絵本です。
ギアナ高地では年間を通じて大量の雨が降るそうです。
それで山が削られ、不思議な形の山・テーブルマウンテンが出来たそうです。
この絵本にもその不思議な山が描かれています。
この絵本は「ヒコーキきょうだい」がそのギアナの空を飛ぶ冒険話になっていて、
彼らが見た大自然のすごさに圧倒されます。
ここにはあべさん得意とする動物たちの姿が描かれていませんが、
まるで竜のように力強く流れる川や満天の星に
命そのものの強さを感じます。
表紙裏と裏表紙裏の見返しに、これはたぶんあべさんが旅行の際にスケッチされたのでしょう、
いくつもの素描が掲載されていて、
あべさんの絵本が生まれるその瞬間を感じられるようになっています。
さあ、あなたもギアナの夜間飛行の旅にでましょう。