ブログで高楼方子さんの作品を紹介していた頃、読者の方からこの作品もいいですよと勧められて読みたいと思っていた本です。
読んだ後、子どもたちが生きていることの肯定感に充たされてとても良かったと思えたのですが、これを文章化するは難しいなとも思いました。
最初の頃には明かされませんが、どうも小学6年生の後半で不登校になったらしいまゆ子。まゆ子は、母の勧めで女子寮の舎監を務める根津さんに会いに行きます。
寄宿舎で思い浮かべる児童文学といえば「小公女」。その「小公女」が作品のモチーフとしてあります。
根津さんの娘・汀子(通称テト)とまゆ子がアーメンガードに似ていると思ったアミとまゆ子の三人は初めて出会った時から意気投合します。
女の子たちが仲良くなっていく様子はとても生き生きとした描写で、かつ自分の少女時代を思い出してとても懐かしく思いました。
寮生の間に伝わる伝説や、塔の家、三人がたまに出会う不思議な青年など、謎を秘めた内容が次第に明かされていきます。
それに伴う少女たちの気持ちも丁寧に描かれていきます。三人の成長を見守る森さんの存在がとてもいい感じで描かれていると思います。
テトが森さんに自分の母を「人といるときはけっこうちゃんとしてるの。親切だし、明るいし、それにたしかに、いろんなことができるかもしれないの。でもときどき、ほんとに、ぼうっとしてため息つくの。あれ見ると、こっちのほうがため息つきたくなっちゃうんだよね」と。
女の子は、母親を母としてだけでなく一人の女性として客観的に見ることがあるということ自分の経験からもわかります。
その問いに森さんは
「ちょうどあんたたちが少しずつ大人になっていくのと反対に、中年のおばさんかは、少しずつおばあさんになっていくでしょ、どんなに若く見えたったね。あんたたちくらいの歳の子が、人によって神経過敏になるのと同じで、おばさんたちも、気持ちがふらふらする人はするんじゃないのかねえ。体の影響はばかにならないもんだから」と答えています。
自分の思春期の頃に、この本があったら、母の不安定な時期も少しは理解できたのかもしらないと思いました。
児童書なのですが、この児童書が読める頃のお子さんとお母さんと一緒に読んでいただけたらいいなと思います。