『新編 子どもの図書館』において、石井桃子さんは子どもたちとの交流を通じて本の力と可能性を探求しています。彼女は1950年代後半にアメリカとヨーロッパの児童書施設を視察し、日本の遅れを痛感した経験から、自宅を開放して「かつら文庫」という私設図書室を開設しました。この本は、その文庫設立から7年間の経過と成果をまとめたものであり、本の選定、子どもたちへのアプローチ方法、そして読書がもたらす子どもたちの変化に焦点を当てています。
石井桃子さんの考え方は、ただ単に本を提供することにとどまらず、子どもたちがどのようにして本に親しむかを重視し、絵から文字へ、そして抽象的な思考へと段階を踏んで理解を深めるプロセスを重要視しています。これにより、子どもたちが本を楽しみながら学び、豊かな想像力を育てることができるとしています。
また、この図書館プロジェクトは後に「東京子ども図書館」として財団法人に引き継がれ、石井さんの初志を基に、さらに多くの子どもたちへと読書の楽しみが広がっています。石井桃子さん自身の人生とキャリアも、編集者、翻訳者、そして児童文学作家として幅広く活動し、日本の児童文学の発展に大きく寄与したことが窺えます。
この本は、読書の重要性とともに、読むことの楽しみを子どもたちに伝えるためのヒントが詰まっており、親や教育者にとっても大いに参考になるでしょう。石井桃子さんの洞察に満ちたこの作品は、子どもたちの心に火をつけ、未来への知的好奇心を育てる一助となることでしょう。