『星新一ちょっと長めのショートショート5』(理論社)。
表題作である「おのぞみの結末」をはじめとして、8篇の「ちょっと長めのショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品に挿絵がついています)は、和田誠さん。
『ショートショートセレクション』シリーズの場合、ひとつのお話に一枚の和田誠さんの挿絵でしたが、このシリーズでは2枚あったりして、こちらも「ちょっと多め」。
面白かったのは、「計略と結果」「夢の大金」「金色のピン」の3篇。
どうして面白かったかというと、この3つの作品の書き出しが同じところ。
「ノックの音がした。」
内容はまったく違うのですが、書き出しは同じで、「ノックの音」というところがいい。何かが始まりそう、そんな予感がする書き出し。
「計略と結果」では、ノックのあとに押し入ってきたのは逃亡犯。逃げ込んだ先は病院。そこの医者はピストルを突き付けられて絶体絶命。さて、どうなるか。
「夢の大金」も、ノックのあとに押し入ってきた二人組の男。この家に住んでいたのは生きることに絶望している老人ひとり。さて、どうなるか。
「金色のピン」の場合は、ホテルの部屋をノックしたのは隣の部屋の客。お金が足りないので貸して欲しいという。その客がお金の変わりにくれたのが金色のピンで、これには不思議な力があるという。半信半疑の二人の女性たちは、しばらく会っていない男に会いたいと願う。さて、どうなるか。
ノックの音だけで、あまりドアを開けない方がいい、かも。