戦争で故郷も家も今日食べるものさえ失った家族
パンを買いに行ったはずのおとうさんが買ってきたものは
ちずでした。
お腹がみたされず、おとうさんをゆるさないと思った息子が
壁一面のちずをみて、イメージで世界中を旅します。
色もなくすなぼこりのたつ暗いすみかで
ちずの彩りがあふれたとき、
どんなにぼくにとって生きる夢を与えられたことでしょう。
ぼくと絵本の中で、いっしょに旅をし、
最後には心が満たされ、希望が感じられる絵本です。
ユリ・シュルヴィッツのおとうさまは、
いっときお腹を満たす満足よりも
これからの人生を満たすことへのしあわせを、
息子に与えたかったのかもしれません。
何度読んでも、じんわり心にあたたかさがひろがります。
物があふれた現代のわたしたちへの問い返しとして
受け止めました。