パキスタンの北西辺境州の州都 ペシャワールの難民キャンプが舞台です。
アフガニスタンは、長い歴史の中でたくさんの周辺国や大国にその運命を翻弄されてきた国です。
近年も1978年から現在まで断続的に発生している紛争により、アフガニスタン国内から国外に逃げた人々(難民)のうち1990年代までに330万人がパキスタンへ逃れています。
また300万人がイランへと定住しています。
さらに、作中のリナのようロシア、ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリア、インド、中央アジアなど世界の各地へ離散した人々も一部います。
10歳のリナが救援物資に群がる大人の中で、やっと手にしたのが2年間はいていない靴、それも片方だけのサンダルでした。
片割れを履いている女の子をすぐ見つけますが、キャンプの中では顔なじみでも話したことのないフェローザ。
これがきっかけで二人は接近し互いの身の上を語り合います。
読んでいて、家族との悲しい別れなど、耐えられない状況の内容に心痛みました。
生き伸びるための糧を得るためには、大人でも非情にならざるを得ないような状況下にありながら、二人は一日交代でサンダルを一足として履くことにします。
リナやフェローザのこの優しさや思いやりは、どこから湧き出てくるのかしらと、と感心してしまいました。
やはり彼女たちが、持って生まれた宝だと確信するとともに、こんなに心が綺麗な子どもたちが、劣悪な環境の中で、必死に子供時代を生きなければならない事に大きな憤りを覚えました。
リナがアメリカへと移住できることがわかった後のフェローザの行為とリナの配慮。
そして、フェローザの考えた美しい提案に涙が止まりませんでした。
小林葵さんの素敵な訳によるタイトルが、本当にこの作品を生かしていると思いました。
世界中に、難民は二千万人以上いますが、その半数がリナやフェローザのような子どもたちだということを知りました。
この世に生を受けた全ての子どもたちが、子ども時代の心置き無い自由な時間と精神活動を享受できる世界が来るよう願ってやみません。