「無事でよかったね」と思わずネタバレから始めてしまいたほどに、緊迫感のある絵本です。
きっと黒い羊は、どれだけ周りに迷惑をかけているか自覚はないのでしょう。
勝手気ままに集団行動を外れただけなのです。
このような行動をしてしまう子どもたちを知っていると、決して他人事でも絵空事でもない物語です。
帰ってこない黒い羊が心配でたまらない羊飼いの少年は、危険を冒してまでも夜の山に向かいます。
獲物を狙うピューマの存在が不気味です。
ピューマの飛び降りた音、子羊の鳴き声、戦う音という描写には息が止まりそうでした。
その時、少年が連れて行った犬の存在を思い出しました。
緊迫のシーンが絵では表現されていないことが、とても効果的な絵本です。
危険に満ちた社会の側面を象徴しているように感じました。
黒い羊が、もしくは人間社会の黒い羊が、このことから学んでくれることを願います。
レナード・ワイスガードの沈んで重厚な絵が、物語に深みを与えているように感じます。