日本昔話のテレビでも見たことのあるおなじみの物語で、虫好きの我が家の幼稚園児2人が喜びました。飯野和好さんのごってりした筆づかい、どこか泥臭い虫たちの表情、時代劇風の設定(虫が髪を結っている!)だけでも笑えます。その上、語り口がどことなく落語調で、ばったの「とくさん」とか、むかでの「たへえさん」とか、人間味があります。むかでが医者を呼びに行ったまま帰ってこないとき、「うーん」「ふーむ」「ええ?」「なんです?」など、見開き2つ分に書かれた虫たちの会話で沈黙の時間がジリジリと過ぎている様子が伝わってきます。こういうのを「間」と言うんでしょうか。よくできた絵本だなあと思いました。