JR東日本の企画「ウルトラマンスタンプラリー」(平成27年1月13日〜2月27日)が好評らしい。
JR東日本の首都圏の主要な駅に設置された歴代ウルトラシリーズの全64種類のスタンプを集めるという企画で、スタンプ10個でウルトラめんこがもらえるという。
スタンプを押すパンフレットには怪獣たちの特長も載っていて、これを持つだけで往年の怪獣博士の気分になれる。
おそらく子ども向けの企画なんだろうが、大人たちが夢中になっているそうだ。
なにしろ、「ウルトラQ」がTV放映されたのが1966年、昭和41年だから、この番組をリアルで見ていた世代ももう60歳を越えているはずだ。
昭和30年生まれの私の、小学生の同級生で怪獣のことが滅法詳しかった男子がいたが、もしかしたらこの企画に歓喜しているのではないだろうか。
この絵本はタイトルでわかるように、怪獣を描いた作品だ。
作者の長谷川集平さんは昭和30年生まれだから、「ウルトラQ」世代といっていい。
ある夜、少年は空で「びゅわん びゅわん」の音に目を覚ます。
それはきっと怪獣にちがいない、と隣で寝ている父親に訊ねる。
怪獣の名前は「トリゴラス」。大きな鳥の怪獣だ。
ラドンのように大きな羽根で空を飛び、地上に降り立てばゴジラのように大暴れ。
少年の頭の中では、街はもう「めちゃくちゃ」で「ぐちゃぐちゃ」になっている。
しかも、こともあろうにかおるちゃん(少年は密かに彼女のことを想っているようだ)のマンションからキングコングのように彼女を連れ去ってしまう。
父親は「あほか」と、そんな少年を一蹴する。
「あの音は、ただの風の音じゃ」。
少年のなんともいえない横顔が切ない。
評論家の草森伸一は「少年の永遠の姿を捉えた絵本」と評したそうだが、怪獣に夢中になったかつての少年たちは、怪獣に連れ去られてそれぞれのかおるちゃんを助けようとしていたのだろうか。
そして、あれから半世紀近く経って、まだかおるちゃんを救出できなくて、JRの緑色や赤い電車に乗ってスタンプを集めているとすれば、「あほか」ですまされない少年の純情である。