この自然につつまれて生きている、孫の小学生のわたると、彼を見守りながら一緒に暮らしているおじいさんの伝じいとのお話です。
この絵本を読む人には、どうしても見てもらい場面があります。
一つは、ふぶきで一面が白い雪で埋めつくされるなか、熊の寝床に入って、伝じいが一晩を過ごす場面。
そして、雪をかぶった大朝日岳がまっかにもえるように輝いている場面です。
これらの場面の絵を見ていると、自然と人間とのつながりの深さと、自然の偉大さが心にズンと伝わってきます。
死んだらいやだよ、と言うわたるに、伝じいは、
「こんなに長生きできたんだ。もうけもんよ。十年も前に死んでいれば、わたると会えなかった。長生きはするもんだぞ、わたる」と伝えます。
この伝じいのことばを聞くと、人間は大自然のなかで生きているちっぽけな存在ではあるけれど、生きるってことは、なかなか良いもんなんだぞと言われたような気もちになります。
こんな風に、やさしくかつ冷静に自分の生と死について語れる老人の存在を、私たちはもっともっと大切にしなければいけないのではないかと改めて思った絵本でした。
おじいさん、おばあさんがいてもいなくても、就学まえの子どもたちに読んでほしい一冊です。