かぎばあさんシリーズの20作目だそうです。大人の私ですら考えさせられるような内容を、小学校中学年くらいの子の心にも届くように書かれています。
今回の主人公は、勇太くんという小学校3年生の男の子で、おばあちゃんとお母さんが野菜の無人露店をやっています。その野菜を代金を払わずに持って行ってしまう人がいて、勇太の家では困っていたのですが、それを知ったテレビ局が隠し撮りをして犯人の姿をとらえたいと取材を申し込んできました。お父さんは了解してしまったのですが、大学生のお兄ちゃんが猛反対をして、ユダヤ人の格言『かぎをかけるのは正直者のため』という言葉をもちだしてきました。その言葉に、家族は揺れます。でも、お父さんは一度約束してしまったことを覆すことが出来ないと言い、家族の心がバラバラになります。ひょんなことから翌日に、野菜を持ち逃げする中学生を目撃してしまった勇太は、その中学生の事情を知ってしまい、全力で取材を阻止することにしたのです。結局、その作戦は成功したのですが、勇太のお兄ちゃんが作戦実行者として濡れ衣を着せられてしまうのです....
このような実のところかなり社会的な内容の話なのですが、物事の善悪のことや人間は本当は弱い存在であることなどをとても分かり易く書かれていて、とてもよい話でした。
特に、かぎばあさんが説明する人間には黒目と白目があるけれども、何故、黒目で物を見るかを説明する部分が圧巻です。結構面白い話が多い「かぎばあさんシリーズ」で、我が家の4年生の息子に読ませるために適当に図書館の本棚から借りてきた1冊でしたが、大正解でした。是非、お子さんも大人の方も一度、読んでみてください。お薦めです。