今年の夏休みに、息子も読んでいました。
ナイマの家族への深い思いやりやいたわりの優しい心にうたれます。
バングラデシュは、貧困と飢えに苦しむ人の多い国。
日本もかつてそうであったように、女性が自立し外で働くことを慣習的に認めていない地域の多い国です。
リキシャに客を乗せる仕事をしている病気がちな父親の休憩時間に、男装し少しでもリキシャで稼げたらと、こっそりローンの残っている新しいリキシャの運転を練習し壊してしまったナイマ。
彼女の行為が親を助けようとする思いからのものであるのに、彼女を含め家族を苦境へ苦境へと陥らせて行くストーリーに胸が詰まります。
女の子に生まれたことも、貧しい家庭であることも何一つナイマには責任のないことです。
古い慣習に縛られる小さな共同体の中、自らの失敗の責任をとるためナイマは見事に勇気と行動力をもって、結果的に彼女の「生きる道」を切り開きました。
自らの非力さをかみしめ自信の存在価値を見いだせないでいたナイマが、ハッサン修理店の女主人からかけられた「あなたが女の子でよかった。・・・」という言葉は、彼女が初めて「人」として社会に肯定された瞬間だったと思います。
ムハマド・ユヌス氏の考案したマイクロファイナンスというシステムが、このお話の中で『女性銀行』という名前で出てきます。
元手を持たない社会的に弱い立場にいる女性に小口の融資をし、自立を助けるこのシステムで、お金を借りビジネスを始めるハッサン修理店の女主人のような人が増加しつつあるそうです。
そしてその女性の多くが、子どもたちに十分な教育をうけさせるという事に懸命になっていることをあとがきで読み、その未来へつながる「希望の光」が輝き続けるようにと祈りました。