2010年高学年向け課題図書に選ばれていた作品です。
前から気にはなっていたのですが、今頃読みました。
バングラデシュという国はインドの近くにある国で、
正式に独立したのは1971年の12月です。それまでは東パキスタンと呼ばれ、パキスタンの国の1部でした。
イスラム教徒が多い国なので、公の場所では男女は別々にいるものという概念が根底にあります。もちろん、結婚して家族になっている場合は問題ありませんが。
そして、この本で主人公のナイマがさんざん悩んでいるように、男の子は働き手として外へ出ていくことが可能なのに、女の子が職業婦人として社会に出ることはまだまだ課題が多い国でもあります。
ただ、ナイマはこの作品でまだ10歳なんです。
なのに、家族を助けるために“働き口”を探しています。
日本では考えられないことです。
この作品では、バングラデシュの国全体で、女性が社会進出できる基盤が整ってきたことを喜んでいる様子がうかがえますが、
個人的には社会進出の前に、『10歳の子どもが働かなくてはいけない』
『働き口を探したいと思う』ことのない国造りをしてほしいと思いました。
せめて15歳以下の子どもたちには学校で学ぶ時間を、いろいろなことを知る楽しさを知ってから社会に出てほしいです。
字も大きく、本編も簡潔にまとまっているので、児童書を読みなれていない人でもかなり読みやすいと思います。
逆に本好きにはちょっと物足りない量かもしれません。
この本を手に取った子どもたちが、この国のことや10歳で働き口を探さなければならない子どもたちのことを考え、
この先の未来につなげてくれたらいいなと、思いました。