「おおかみと七ひきのこやぎ」の日本版といった始まり。
留守番をすることになった三人の兄弟のところへ、やまんばがやって来て、玄関の戸を開けさせようと、手をかえ品をかえ、悪戦苦闘する姿に笑いを誘われます。やまんばは素直といえば聞こえが良いですが、すっとぼけた性格で、全然怖くありません。やまんばの動作に使われる擬音の部分を、目一杯怖〜く読んで丁度いい加減です。
また、語尾が方言まじりで戸惑いましたが、適当に抑揚をつけて読むと、田舎の語り部風に聞こえてまた楽しいです。
タイトルの“金んつな”、なんて不思議な日本語でしょう。でも聞けば納得します。神社のさい銭箱の上に垂れ下がった、鈴のついたあの綱のこと。(金のついた綱→金んつな)‥なるほど、方言でしょうね。
やまんばから必死に逃げる兄弟が、神様に向かってとっさにお願いした、意外な発想でした。モノの乏しかったとんと昔、神様に結びつく唯一身近な存在だったのかもしれません。
小説「蜘蛛の糸」を連想するクライマックスですが、違うのは、梶山俊夫さんの描く温かい絵も手伝って、さらりと読めてほっこりする昔話という点です。やまんばが怖いというお子さんにもお薦めです。