「絵本が目をさますとき」長谷川摂子(福音館)
とても興味深く読みました。あとがきに、「ブックスタート時の読み聞かせの参考に」と言う声に応えて「母の友」連載の文章をまとめたとありますが、お母さんが気軽に読むにはちょっと重たいかも、と思わないでもない。でも、読み聞かせのボランティアに興味がある人なら、とても参考になると思いました。
特に、最初の3章の具体的な読み聞かせの仕方に、ぐっとわたしは心が惹きつけられてしまいました。さすがに、長年、保育の現場で読み聞かせを実践してこられた方だけあります。
「くだもの」平山和子(福音館)
この絵本は、色々ブックリストに載っていて興味がありながら、果物の絵とその果物を剥いた絵が交互にあり、文章もごくごく短い言葉だけ、ということから、一体どんなふうに読むのだろうか、と疑問に思っていた一冊です。
それを、こんなにも魅力的に読む方法があったとは!?
赤ちゃん向け絵本は、語りかけ、対話が大事なのだと思わされました。
そして、
「おつきさまこんばんは」林明子(福音館)
についても同様です。こんな読み方があったんだ、と言う驚きで一杯です。
さて、本書は、赤ちゃん向け絵本として適しているもの、ということから、そこから物語絵本へと移行するための必要段階、個性的な絵本作家の紹介、良い絵本を選ぶときに欠かせない絵の問題について、そして、キッチュ絵本と物語絵本の違いなどについて書いてあります。
わたしが、上にあげた具体的な絵本の読み方以外にとても興味深かったのは、あかちゃん絵本と物語絵本との違いを子供の心の成長から書いた部分です。
あかちゃん絵本は、日常の言葉で、日常の自分のままで読むことができますが、物語絵本は、日常の自分を抜け出し、登場人物になりきることができないと、その世界に入ることができないのです。
そして、そんな物語絵本には、現実をサバイバルすべく緊張感を強いられる「おおかみと7ひきのこやぎ」(自分の無力感)や「三匹のやぎのがらがらどん」(強者礼讃)のようなものと、自己肯定感を無条件に認める、予定調和の世界である「ぐりとぐら」や、「ぞうのババ―ル」がある、ということです。
それから、良い絵本を選ぶには、結局は個人それぞれの育ってきた環境や感性のありようの問題、個人的な嗜好の問題であるという部分を読んで、読み聞かせる側の感性を磨く必要性というものも感じました。
でも、そんな難しいことを考えなくても、一番は、読み聞かせた相手の笑顔であることはもちろんなのですが。
買って手元に置いておきたい本だと思いました。
長谷川さんは、理論と実践が理想的に結びついた方なのではないでしょうか