児童文学作家10名による、小編怪談集。学校や自宅、通学路など、身近な場面で起きる怪奇現象。それぞれの作家の個性豊かな世界を楽しめる。
どれも面白かったが、特に印象に残ったものについて。
「赤い日記帳」 後藤みわこ・作
小学校の女子が、授業中に手紙を交換し合っている。間に挟まれた少女が、陰湿ないじめにあう。自分の感情を日記を使って吐き出し、封印してしまおうと思ったが、逆に怒りや恨みなどがあらわになる。
よくできた話だ。表面上は仲良しを装って、陰でバカにしたり、いじめたりするのはよくある話。誰でも多かれ少なかれ、体験していると思う。特に女子のいじめは陰湿で、質が悪い。
この話を読むと、自分が小学校時代に出合った、性格の悪い女子を思い出す。なぜか教師にはウケがよかった。(その教師も、大変に暴力的だったから、お互い馬が合ったのだろうか)
この作家は、そういう様子を実によく観察して、覚えているのだなあ。もしかすると、実際に見聞きしたのかもしれない。
結末はあまり悲惨なものではなかったが、いじめられている側も、いじめる側も同じくらい悪の強い性質なのがわかって面白い。
2対1で勝っている上、怪奇現象を起こす日記帳まで破壊しているのだから、侮れない少女だ。
次はいじめる側に回るのではないか?という、怖ろしい展開が想像できてしまった。