当世落語「風」絵本、大島妙子さんによる作品になりますが、
実際に落語でもありそうなお話です。
噺家さんになったつもりで、感情豊かに読んで楽しめる絵本です。
死んだ子どもの手首だけが戻ってくるという不思議なストーリー。
夫婦の会話だけで進む場面も多く、
かなり興奮や恐怖するところもあって、
読むのに、ついつい声を変えてみたり、手を動かしたり、工夫してしまいます。
ちなみにあの世は会話の中にしか出てこないのです。
腕の、いえ声の見せどころですね。
会話の長さや断末魔のような声など、読むのに難しいところはありますが、
読む進めるほどにその感情が自分にうつりこんで、世界に入り込めます。
悲しさ嬉しさの上がり下がりがたくさん、
読み切れば、青空の下の晴れやかな終わりが待っていて、
マラソンを走り切ったような爽快さです。
私は本当は怖い話が総じて苦手で、
手首だけとか地獄が出てくる、このお話は気味が悪い部類なんです。
でも不思議とあたたかい気持ちに。
ニコニコと松吉とともに仕事に行くテの助を見て、
うんうん!良かったな〜としみじみ思いました。
子どもは時折ゲラゲラと笑っていましたが、
最後に感想を聞いたら
へんてこりんなお話だねー、だって!
頑張って読んだのに、それだけ!?でしたが、
「孝行」の意味も知らない子、仕方ないか。
死んでもなお、それぞれがお互いを想いつづけたから
起こった20年目の奇跡。
大島さんの伸びやかな絵に心ほぐされながら、
テの助たちのような強い絆を持つ家族に
自分たち親子もなれたらなと思いました。
子どもにもいつかこの家族の想い、伝わる日が来るでしょうか。
読み手と聞き手、親子ともに精進が必要なようですね。