『星新一ショートショートセレクション5』(理論社)。
表題作である「番号をどうぞ」をはじめとして、16篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
星さんの作品は「SF」というジャンルに入るのだが、起こりそうな近未来をどこまで実現しそうな世界として描くことに作品としての妙があるのだと思う。
表題作である「番号をどうぞ」の場合、最近大きな話題となっているマイナンバーカードの相次ぐトラブルを予知したかのような作品なのに驚いている。
物語はこうだ。
休暇を利用して山の湖にやってきたエヌ氏だが、誤ってボートから転落してしまう。
はずみで自身を証明するカードの類をすべて失くしてしまう。
そのせいか、エヌ氏は買い物もできず、車にも乗れない。行政のサービスさえ受けられない。
言われるのは、ただ「番号をどうぞ」。
「用件にしろ要求にしろ、どんなに遠くても、なにもかも回線とコンピューターで一瞬のうちに片づく時代。それなのに番号が思い出せないため、こんなひどいことになろうとは・・・」
まるで、マイナンバーカードに縛られて、明日の私たちの姿のようではないか。
星さんの作品を今読むと、これはまるで現代のあれのようだとか、現代のどこかの起こっているようなことだとか、そんな風に思えるものがたくさん出てくる。
現代との類似性を見つけるのも、星新一作品の楽しみのひとつだろう。