『星新一ショートショートセレクション14』(理論社)。
表題作である「ボタン星からの贈り物」をはじめとして、13篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
いままでの巻より収められている作品が少ないのは、「午後の恐竜」という作品がちょっと長めのショートショートになっているから。
これはある日突然世界中に恐竜が現れるのですが、実態がなく、その不思議な現象に誰もが首をひねります。その一方で、水爆を積んだ潜水艦が行方不明となっていて、もしかすると世界中で起こっている現象は、人が死の直面に過去の人生を見るというものではないか、つまり人類は滅んで…。
ショートショート超えた、一級のSF作品として楽しめます。
また、表題作の「ボタン星からの贈り物」もうまいオチがついていて、ショートショートというのは物語の設定の巧拙もありますが、オチの切れの良さとも関係しているように思います。
思わずニヤリとするオチがあると、とても満足できます。
星新一さんがいつまでも人気があるのは、そういったオチの巧さにあるといえます。
この巻にある「友だち」という作品もいい。
小さい娘がどうも妖精と遊んでいるようだと心配する父親。父親には妖精なんかつくりごとだと思っている。相談を受けた医者の言葉。
「われわれは本を読み、そこから限りない知識と創造力を得ています。しかし、自分でその楽しみを味わう方法を、幼いころ、最初に手ほどきしてくれたのは、だれでしょう。」
誰のところにも、妖精はやってきていたのかもしれません。