『星新一ショートショートセレクション15』(理論社)。
表題作である「宇宙の男たち」をはじめとして、13篇の「ショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品にひとつ挿絵がついています)は、和田誠さん。
宇宙を描いた小説や映画やドラマはたくさんありますが、その中には宇宙空間で遭難する人間の話が出てくるのは、やはり果てのない空間に放り出される恐怖が並大抵ではないからだろう。
そういう恐怖とどう対峙するか、そのあたりが物語を生みやすくしているのでしょう。
表題作の「宇宙の男たち」もそういう類の物語です。
地球に帰還中のロケットに乗船している青年と老人。青年は操縦士で、長い期間宇宙で働いていた老人を連れ帰る役目を担っています。
ところが、そのロケットに隕石が衝突して、航行不能になります。
ここから二人のやりとりが始まるのですが、何か面白いオチがあるのではなく、静かな大人のドラマを見ているような展開となります。
ショートショートとはいえ、外国映画になるような仕上がりです。
「景品」というショートショートも面白い。
色々なお店で配布されるサービス券を景品に換えてくれる機械の話ですが、まるで現代の「ポイ活」(色々なお店のポイントを貯めて利用するポイント活動のこと)風景を先取りしたような内容で、こういった先見性もまた星新一さんの魅了のひとつといえます。