『星新一ちょっと長めのショートショート6』(理論社)。
表題作である「ねずみ小僧六世」をはじめとして、9篇の「ちょっと長めのショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品に挿絵がついています)は、和田誠さん。
『ショートショートセレクション』シリーズの場合、ひとつのお話に一枚の和田誠さんの挿絵でしたが、このシリーズでは2枚あったりして、こちらも「ちょっと多め」。
表題作の「ねずみ小僧六世」を見て、すぐに思い出すのはモンキー・パンチのコミック「ルパン三世」。青年雑誌に連載が始まったのが1967年というから随分古い。星新一さんがこのコミックのことを知っていたかどうか。
もちろん、「ルパン」というのはフランスのモーリス・ルブランが書いた小説に登場する怪盗で、その三世が活躍するという設定がなんともいい。
一方、星新一さんの「ねずみ小僧」は江戸後期に実在した泥棒だが、金持ちから盗みを働き貧乏ものに分け与えたという伝説があって、彼をモチーフにした小説やドラマも数多くつくられている。
星さんの「ねずみ小僧六世」も盗みの技にかけては天下一品で、しかも盗んだ金を返してしまうという「義賊」ぶり。盗みの手口の鮮やかさとラストのおちが効いている。
そのほか、未来の人類が古代の神として崇める現代人を風刺した「古代の神々」や人生の転機のたびにどこからか舞い込んで指示を与えてくれる「手紙」といった作品が面白かった。