『星新一ちょっと長めのショートショート7』(理論社)。
表題作である「そして、だれも…」をはじめとして、9篇の「ちょっと長めのショートショート」が収められた、児童書。
装幀・挿絵(それぞれの作品に挿絵がついています)は、和田誠さん。
『ショートショートセレクション』シリーズの場合、ひとつのお話に一枚の和田誠さんの挿絵でしたが、このシリーズでは2枚あったりして、こちらも「ちょっと多め」。
面白かったのは、表題作の「そして、だれも…」。
このタイトルで頭に浮かぶのは、やはりアガサ・クリスティーのミステリー「そして誰もいなくなった」だろう。星さんのこの作品の場合、「…」で意味深な感じを醸し出しているが、ここでもやっぱり「いなくなる」のだ。
ただし、舞台は宇宙空間を旅する宇宙船の中。乗っているのは、5名の隊員。そんな閉ざされた空間でありながら、突然隊長の姿が見えなくなる。残りの隊員が船内をくまなく探しても隊長は見つからない。そのうちに、また一人の隊員の姿も消え、さらにまた一人…。
結末も含め、まるでうまく出来上がったアメリカのSF映画のような作品。これは一読の価値あり。
その他、たった一人で小さな国家を作った男の「マイ国家」やいくつもの童話を巧みにつなげ合わせて抱腹絶倒の作品になった「なりそこない王子」もオススメである。