イギリスの片田舎で生活するサッカー好きの若者たちが、サッカー競技に参加するのと同じ感覚で兵隊になりました。
そこで見たこと、感じたことが描かれている作品です。
戦場に出るまでは、さもワールドカップ前の熱狂した雰囲気の中で、なかば主人公にでもなったような気持ちだったのでしょう。
しかし、最前線では張り巡らされた塹壕の中で、至近距離からドイツ兵とのにらみ合いが待っていました。
時折の銃撃戦で死んでいく仲間たちと、あとは身動きもできない緊張感。
第一次世界大戦の中で起こったこと、国民を鼓舞する宣伝ポスターが散りばめられていて、少し距離を置いた描写とともに、若者たちの息遣いまでを表現しています。
クリスマス停戦。
銃を持たずにボールを蹴り合ってみれば判り合える「人間同士」にもなれました。
お互いの塹壕からの歌の交流もありました。
停戦が終わっても、ドイツ軍から「大物将軍が視察に来るので銃撃を開始する。イギリス軍は身を潜めてこれをやりすごされたい」とのアドバイスまで受け取る関係にもなっていました。
しかし、戦争は戦争です。
ホッとした話の後、ゴールキーパーのウィルは、ボールに飛びつくような姿勢で倒れていきます。
そして息を引き取るまぎわのウィル。
戦争とワールドカップを対比させるような本です。
サッカーブームであるだけに、この本の再版が望まれます。