著書あとがきにこうあります。
「私は子供のころからADHD(注意欠陥多動性障害)でした。
もちろん今もそうです。
ADHDはすぐに気が散り、忘れっぽく、ものごとに集中するのも苦手です。
読むことも学ぶのも苦手なのですが、それはそんなことが背景にあるからだと思います。
なにしろ、じっと座っていることややるべきことをすることさえ、むずかしいのですから」
この作品は、本人の自叙伝です。
ADHDとは、Attention Deficit Hyperactivity Disorderの略称で、自らのその障害を持っていることを告白し、小学生の頃の先生との出会いを記録したものです。
絵本ナビのランキングで、常に上位に位置する「ありがとう、フォルカー先生」は、LD(learning disabilities:学習障害)を取り上げた作品でしたが、背景、ストーリーとも似通った点の多いものでした。
ダグラスが小学校2年のときの、ダグラスとリトル先生のやり取りから物語は始まります。
「ダグラス、もう一回やってみて」
ダグラスは、なかなか本が読めないのです。
放課後、二人だけで、本を読むことに取り組みます。
遅々として進まないのですが、リトル先生は、「ことばをひともじずつ、声にだしてよんで」「ゆっくりやって」とだけ言って、根気強く一緒になって頑張るのです。
その本は、TheLittleIsland。
言わずとしれたゴールデン・マクドナルド(マーガレット・ワイズ・ブラウン)とレナード・ワイスガードの黄金コンビによる1947年のコールデコット賞受賞です。
ダウラスは、毎年家族で夏に訪れた島に、その面影を見出し、本にのめり込んで行くのです。
そして、ある日読み終えることができたとき、リトル先生はダグラスを抱きしめてくれるのです。
「先生、あしたほかの本をよんでもいい?」
「もちろんよ!」
心の琴線に触れる最高の会話です。
ダグラスにとって、その本との邂逅が、彼の人生を決めたと言っても過言ではありません。
それから、物語は、エンディングに一足飛び。
ダグラスが、何年か後に、リトル先生に自身が執筆した本を贈り、白髪になったリトル先生が、その本を抱きしめているシーンで、物語は終わります。
二人のやり取りが克明に描かれているのが、この絵本の魅力です。
ただ、「ありがとう、フォルカー先生」に比べると、起承転結の起伏がそれほど無いため、感動の度合いが落ちるかも知れません。
それでも、小学校高学年くらいになったら、是非読ませたい絵本であることに違いはなく、大人にも読んで欲しいと思います。
また、世の先生方にもオススメしたい絵本です。
本の素晴らしさを再認識させられた逸品です。