格調高い絵本です。すっごく好きなんですよ、こういう世界。けれどもうまく言葉に表せない。これが率直な感想です。
開発された道路、工事現場、家庭のわき道など、何気ない日常の中で犬が走ってゆく。ただこれだけなんです。
最も印象的なのは農場の風景。トラクターを導入してラクラク〜と軽やかに作業をなす一方で、周りの農家は「いいなぁ」と呆けてしまったり、重い荷車を押しながら目線を奪われてしまったり、見てみぬふりをしたり。楽をする人がいれば苦労している人もいる。そんなことを気にすることなく犬は通り過ぎてゆく。
この作品は漫然とページをめくるより、1ページにしぼって五味さんが何を描きたかったのかをじっくりと眺める方が楽しめます。
【画】机の電気スタンドにかけられたカエルのマスコット、ペンキの詰まった缶から滴り落ちるしずく。細かい所にニヤっと笑えるワンポイントが散りばめられています。
「到着」にふりがなが振っていないなど、子供向きではないのかもしれません。
ただ個人的な感想としては子供・おとな 両世代の感想を比べると更なる発見がありそうな楽しい1冊と感じました。