宮西達也さんといえば、『おとうさんはウルトラマン』や『おれはティラノサウルスだ』といった作品で人気の高い絵本作家です。
絵本作家には文章のうまい人、絵の上手な人、きれいな絵を描く人、力のこもった絵の人などさまざまなタイプがありますが、宮西さんの場合は少しコミカルな絵といえるでしょう。
だじゃれ上手な長谷川義史さんのような人もいますが、宮西さんの場合、そのコミカルさは少しちがいます。
長谷川義史さんが大阪の出身で宮西さんは静岡の出身。
絵本作家にも風土ってあるような気がします。
この作品に登場するかえるくんたちの姿も、どこか飄々としています。
まず最初に登場するのが、つちがえるくんとあまがえるくん。二匹はよく似ていますが、肌の色がちがいます。つちがえるくんが茶色であまがえるくんが緑。
しごく簡単。そういうあっさりとしたところが宮西さんの絵にはあります。
二匹の間にはきれいな一本の紐のようなもの。
「なんだろう、これ・・・?」と、二匹は紐のようなものの端っこを持って、引っ張り合いを始めます。
そこに少し身体の大きいあかがえるくんが登場。
もちろん、色はうすく赤っぽい。
あまがえるくんの方についたものですから、つちがえるくんはずるずると引っ張られていきます。
ここにこの絵本のタイトル、「はなすもんかー!」がでてきます。
その声に現れたのがとのさまがえるくん。
身体がひとまわり大きく描かれています。
つちがえるくんに味方したので、形勢逆転。
あとは、ひきがえるくん、うしがえるくんと、次々に出てきて、ひっぱりっこが続きます。
六匹のかえるくんたちは、形や色こそちがえ、ほとんど同じように見えてしまいます。
きっと長谷川義史さんならうんとちがった表情をこしらえたでしょうが、宮西さんはそんなことはしません。
スマートなんですね、きっと。
でも、東京人ほど澄ましてはいない。
そういう中間点のところにいる感じです。
かえるくんたちが一生懸命にひっぱっていたものって、何だったのでしょう。
それは、絵本を読んで、確かめて下さい。