子どもの前には未知の世界が広がっています。そこは最初は怖いかもしれないけど、素晴らしいところ。いろいろなことを体験して成長していくスイミーに、子どもたちも負けていられない!
以下は当サイト(ehon of wonder−絵本の力)掲載のレビューより一部抜粋したものです。↓
『あおくんときいろちゃん』(至光社)、『フレデリック』(好学社)、『さかなは さかな』(好学社)等の絵本作家として日本でも広く知られるレオ・レオニ。グラフィックデザイナー、イラストレーター、芸術家として幅広く活躍していた彼が描く絵本は、政治的社会における芸術家の役割だという哲学のもとに作られていたようです。この『スイミー』もそうでした。一匹の小さな黒い魚は、指導者というわけではなく、他の人にかわってものを見ることのできる芸術家であり、それがスイミーの社会における役割なのだとレオニは語っています(『NHK人間講座 絵本のよろこび』松居直 著、日本放送出版協会より)。スイミーは、芸術家として社会において充分役割を果たしてきたレオニ自身でもあるわけです。
デザイナーでもあるレオニの絵本では、色彩豊かなユニークなイラストもまた印象的です。イラストを良く見てください。スイミー以外の赤い魚たちはゴム版で押されたものですが、スイミーだけは手で描かれたもので「目」もあります。これだけでスイミーは他の魚とは違った特別な魚であることを意味しており、読み手は一気にスイミーに引き付けられます。このように、レオニのイラストには読み手の心をつかむ配慮がきちんと施されているのです。
仲間たちがマグロに食べられてからスイミーは独りぼっちになりますが、海の中を泳いでいくうちに、初めて見る世界を体験します。そして徐々に元気を取り戻し強くなっていきます。私たちにも、まだまだ未知のことがたくさんありますが、それらを経験することによって更に成長し続けていくのです。未知の世界を知ることは、私たちを大きくし、そこからは必ずまた何かが新たに生まれるものだと思います。『スイミー』は、そんなことを教えてくれる絵本です。(iloveehon)