「はせがわくん きらいや」
子供向けの絵本に他人が「きらい」って言葉が出てくることにまず驚きました。
(マザー・グースにはありますけどね。外国の童謡だし)
「ぼく」は「はせがわくん」がきらい。とろいし、目がどこをむいているのかわからない。頑固だし、付き合いにくい。
その「はせがわくん」、そうなってしまったのは生まれたときにヒ素ミルクを飲んでしまったから。。。
実際にあった企業事件の被害者を扱ったものです。実際にこの作者もその被害者のひとりです。幸い、大事には至らなかったそうですが。
一度、講演を拝聴したことがあるのですが、制作動機について「生き残ったものとして何かを伝えなければならない。同じミルクを飲んで死んでしまった子供たちに背中を押されているような気がした。」と語っていらっしゃいました。
こういった重い事実を子供に伝えるきっかけとしてこの本を読むというのも一つの読み方でしょう。
でも、長谷川氏は「きらいきらいっていいながら好き」という感情を表現したかったとも語っていらっしゃいました。
そういったアンビバレンスな感情を表した絵本も少ないですよね。
堅苦しく考えなくても、手にとって読む価値のあるいい絵本だと思います。