1983年コールデコッド賞オナー賞受賞作品。
ベラ・B・ウイリアムズは、この「かあさんのいす」に続けて「ほんとにほんとにほしいもの」「うたいましょう おどりましょう」を発表しています。
「かあさんは、ブルータイル食堂ではたらいています。
ウェートレスをしています」
という書き出しで始まります。
次のページには、大きなビンがあって、どうも小銭を貯めているようです。
家族は、かあさんとおばあちゃんと私の3人。
疲れているかあさんが椅子に座って寝てしまっている姿は、生活感が全面に出ている感じです。
大きなビンの中の小銭は、椅子を買うことに使うとあるのですが、火事で焼けたからとあり、ここから話が時を遡るのです。
火事があって、アパートに引っ越したことや、何も無くなってしまったので椅子を買いたいという切なる希望が綴られています。
そして、ビンに小銭が一杯になった時、誰しも椅子が買えるのか、早く結末を知りたくなったのではないでしょうか?
妙に、話自体が身近に感じられ、自らを登場する人物に投影してしまっているからだと思います。
額縁のように縁取られた絵は、華やかさを添えるもので、被災した家族の暗さを微塵も感じさせないアクセントとなっています。
人の優しさや家族の絆が感じられる気持ちの良い作品です。
おじいちゃん(とうさんのとうさん)が登場し、とうさんの存在がないことが一寸気がかりでしたが、それが逆に3人の絆を上手く表現しているのだと思いました。
3部作を通して読んでみたい、そんな作品です。