きつね一家とねずみ一家のかけひきが、わかりやすい詩の口調で語られるお話。子供の頃、この写実的で温もりのあるイラストに随分魅せられました。特に地中の断面図は、いつもいつも眺めていた記憶があります。枯れ葉やどんぐり、まつぼっくりの置かれたねずみの部屋がうらやましくて、枯れ葉のベッドは自分でも作ってみようと秋が来るたび夢見たほど。
お話では、きつねから逃れることのできたねずみ一家の姿にホッとしました。子供だったので、応援したのはねずみの方。でも、きつねのお父さんも子供たちがいるのに、獲物を獲られず大変だったのですね。当時は、その視点がありませんでした。
自然界の姿をそのまま描き切り、ちょっぴりユーモア、ちょっぴり悲哀、ちょっぴり同情などなど、いろんな気持ちが味わえます。
思い出いっぱいの作品なのに、長い間、子供には読んでいませんでした。娘もやはり、ねずみのお部屋が魅力的なよう。ねずみ、きつねのしぐさ・表情が、とっても素敵ですよ。