マーガレット・レイとH.A.レイ夫妻と言えば、ひとまねこざるで良く知られています。
今回の作品は、本国での出版が2000年となっていたので、どうしてなのか?不思議に思ったのですが、夫妻の遺品のコレクションから発見されて、出版に至ったとのこと。
1940年のドイツ軍のパリ侵攻のまさに数時間前に、4冊の原稿(しりたがりやのジョージ)を自転車の荷台に縛って夫妻は脱出します。
そして、スペインからブラジルに行き、アメリカへの移住を果たすのです。
何とこの作品は、当時持ち出した5冊目に当たるもので、まさに歴史的発見である貴重な作品です。
作られた1937年という年を考えると、夫妻がこんなに夢のある物語を描いていたというのは、心に響きます。
現代と異なり、国を超えるということが、不可能に近かった時代背景を考えると、この物語に世界を自由に旅するという思いを託したとしか思えません。
そんな自由な発想が出来たという事実も、驚嘆に値すると思います。
物語は、主人公のペンギンくんが世界を旅して戻ってくるというもの。
そして、最後は英雄として賞賛されます。
ストーリーとしては、思ったほどの大きな展開はないのですが、ひとまねこざるに見られるユーモアが溢れる作品となっています。
レイ夫妻のこの物語に込められた思いを考えるだけでも、素晴らしい絵本との邂逅があったと思わざるを得ない作品でした。