世界のてっぺんにある白くつめたい国のお城に住むむすめは、孤独の中をさまよっていた。
広い広いお城にはまほうつかいである父とたった二人。その父でさえ相手をしてくれない。
名前もなく父から「むすめ」と呼ばれる。
淋しさを埋めるために読んだ本の中で「母」の存在、そして全ての人に「名前」がある事を知る。
幼い頃の夢の中では確かに名前で呼ばれていた。
自分は何者なのか、尋ねても魔法の力ではぐらかされたむすめは
知恵を使い勇気をふりしぼりお城を飛び出す。
自分を知りたいと思うむすめの一念と、ある日突然むすめが目の前から消え自分を責める母の想いが相呼応し宇宙を動かしたのでしょう。
「どれほどの宝であろうと自由にかえられるものはなく、
愛よりつよい力はありません」
印象的なむすめの言葉です。
多国籍というべきか無国籍というべきか、オリエンタルではあるけれど
中世ヨーロッパの風情も醸しだし、今まで見たこともないような
見事な挿絵にも感動しました。
さすがル・カインとしか言いようがありません。
むすめの憂いがページいっぱい漂う中、ル・カインの遊び心を垣間見る
挿絵があり、これは一見の価値がありますよ。