家の中にある道具、家の外にある道具の役割や、構造をひとつひとつ丁寧に教えてくれる本。
1970年福音館書店から刊行。
2001年瑞雲舎から復刊。
私が読んだのは2024年なので、54年後に大人に読まれて、面白がられている絵本。刊行当時に使われていた電話や家電、流行の車などに時代を感じる反面、身近な調理道具や、ドライバーなどの工具は形が変わらない。用途に合った形は、普遍的なものだとわかる。
作者が工学博士や技術士なので、ひとつひとつの道具の構造や形をよくよく観察して、丁寧に、正確に描いていることが伝わる。道具に敬意を払い、これからの世界を作っていく子どもたちを尊重し、実に誠実に作られた愛情たっぷりの作品だとわかる。
物を大切にしようとか、いわなくても、なんだか、こういう絵本を読んだら、きっと物を大切にするだろう。
特に印象に残ったのが、「ものをすくう」道具類。
耳かき、スプーン、しゃもじ、お玉など、それぞれの役割を実に楽しい言葉で表現している。すくう量を表す言葉が、だんだん大きくなっていく。言葉も、少なく、効果的に、楽しめるように知恵を絞っている。
子どもの本を作る人の、真摯な愛情をたっぷり感じて、自分も大事にされていることが実感できた。幸せな絵本。