昔あるところに、器量よしで長い髪をもつ娘がお母さんと暮らしていました。ある冬の晩、にわとりを盗みに来たきつねを追い払うため、娘が庭に出て行くと、きつねが「おらいえさきたら、きれいなべべさやっから」と娘を誘いました。「だれがおまえなんかといくか!」と断った娘でしたが、次の晩もその次の晩もやってくるきつねの言葉に引かれ、とうとうきつねのしっぽに乗ってしまいます。きつねの家に着いた娘は、着物を着せられると、「そうりょうのよめにぴったりだ」と錠をかけられ閉じ込められてしまいます。事の重大さを知り、恐ろしさのあまり泣いていると、1匹のねずみが出てきて、お前が一番大事にしているものをくれたらきつねの嫁にならないで済むやり方を教えてやる、と言いました…。
きつねにだまされて連れ去られた娘が、どうやって助かったか。手段そのものよりも、きつねの住む世界から無事に娘が帰ってこられたことに安堵しました。ストーリーは割とシンプルですが、きつね社会という得体の知れない不思議な怖さがこの絵本のみどころでしょうか。