朝鮮半島の中央で北と南を分断する非武装地帯。
私の若い頃「イムジン河」という歌がありましたが、祖国を無断された人々の思いと、人の思いとは違って、ゆったりとした自然があること、渡り鳥たちが行きかう様が印象に残っています。
この絵本は、非武装地帯の自然と、それを見つめる老人の思いを描いています。
非武装地帯では、動物、魚たちは、邪魔されることなく南北を行き交い、平和に過ごしています。
そして、非武装地帯を囲む鉄条網のそばでは、有刺鉄線を張り替えたり、軍事訓練をしたり、非武装地帯の向こう側を常に意識した人間がいます。
老人は非武装地帯を眺めながら、本当はその中に入りたいのです。
向こう側にいる自分の近親者たちと、抱き合いたいのです。
一つの国が分断される悲劇を感じます。
非武装地帯の自然の中には、昔の朝鮮動乱期の戦いの残骸が何気なく埋もれています。
そして、皮肉にも、動物たちにとっては「楽園」になっているのです。
絶滅寸前の動物たちが生きのびるのは、人の入らない場所。
第三者として眺めるのと違って、韓国の人の思いは複雑でしょう。
動物たちも守られながら、この地帯がせめて交流の場になれば良いと思います。