この絵本に出てくるひつじくんは、私です。私の小学生の頃の姿そのものです。虚弱体質で体も弱く、体も小さい子供でした。そのせいか、自分では普通に話しているつもりなのに、すぐに「えっ?」と、聞き返されてしまうこともしばしばあったのです。
特に、授業中に指された時など、緊張もするので余計です。自分では、最大限声を出しているつもりなのに、聞き返されると、すごく落ち込んだものです。
健康優良児で、地声の大きな姉がとてもうらやましかった。同じ姉妹なのになんでこんなに声の大きさが違うか・・・。
だから、この絵本を読んだ時、すぐに惹き込まれてしまいました。
くま校長先生が、病院から学校に言っての帰り道、ひつじくんに、
「ひつじくん、おおきなこえをだそうねって、いっぱいいって、ほんとうにわるかったね」
と、謝る姿に、本当に涙がこぼれました。こんな、いい先生が世の中にいるのかしら。先生が、生徒に真剣に謝る姿を私は見たことがありません。こんな先生に一回でも授業をしてもらった子供たちは、本当に幸せ者ですね。
絵本の中では、ひつじくんが、くま校長先生を助けようと思ったときから大きな声がでるようになりましたが、私は、中学、高校と運動部に入って声を出していくうちに、腹から声を出せるようになり、今では、娘の小学校で読み聞かせをするまでになりました。今のところ、聞き返されたことがないので、人並みの声が出ているものと思われます。
最後に、いもとようこさんが、実在の校長先生をくまさんに例えて描かれたことに、大瀬先生に対する深い愛情を感じました。癌に蝕まれた姿は、テレビで拝見していても、痩せてしまわれて本当に痛々しかったのですが、絵本の校長先生は、最後までふっくらとしていて、誰からも愛される姿をしていたからです。