素晴らしい文・絵の作品だな〜、と思い手に取りました。
タンザニアが舞台。
野生の世界で、動物たちは、“生き残るための手段”として「食べる」という行為をしていると安易な思いこみをしていました。
しかし、そこにはもっと大きな役割りが備わっていました。
たくさんの証言により、ライオンがヌーを「食べる」ということが、どんな意味を持つのかが、裁判の形式で明らかになっていきます。
ライオンが食べることにより、草食動物は数が一定に保たれ、よって、草原がまもられる。
ライオンが食べる動物は、弱い、力のないもの。
つまりそれは、病気に罹っている動物も多く、ライオンが食べることで、群れは、伝染による全滅を免れるのです。
マサイの村の牛の死に関する証言を読み、ドキリとしました。
モンゴルでは、オオカミを全部は殺さないのだという証言には、オオカミの役割を理解している人もいるのだと改めて知りました。
自然の摂理によって、生きている動物たちと人間のこの“食への姿勢”の違い。
人間が、足るを知らず命を奪って来た動物の、なんと多いことでしょう。
食卓にのぼっているものが、きちんと全て口へ運ばれているとはいえません。
裁かれるべきは、人間かもしれません。
自然界の中で、人間も生かされているのだということを忘れていると思いました。
人間の手によって、歪められ破壊されて来たもののなんて多いことでしょう。
その手は、動物界にまで及んでいることでしょう。
謙虚な気持ちで、考え直さなくてはと教えられた一冊です。
息子が4年生の時に読みました。
中学年くらいからが、問題意識を持って読めるのではないでしょうか。