「ウェン王子とトラ」「この世でいちばんすばらしい馬」で、つとに有名なチェン・ジャンホンの作品。
新作かと思いきや、さにあらず。
2004年の作品で2011年の邦訳ですから、実は、3作とも同じ頃に製作されたということになります。
物語は、ローおじさんという漁師が、嵐の日に見知らぬおばあさんを向こう岸まで舟を出すシーンから始まります。
その時、おばあさんがくれたのは、種。
種を植えるとたちまちに大きなハスの花が咲くのです。
驚くことにその晩、そのハスの花からリアンという女の子が生まれます。
リアンが持つハスで何かに触れると、舟は赤い漆の立派な舟になったり、食卓にはご馳走が溢れたりするのです。
ローおじさんが良いのは、リアンのお陰で魚が一杯になるので、村中の人に分け与えるということ。
独り占めにしないという心は、やはり見習いたいものです。
そんなリアンの噂を聞きつけたのは、強欲な王様の娘。
その後の展開はありがちなものですが、欲をかき過ぎた娘への仕打ちは、あっと驚くものだと思います。
結末も、読み手を落ち着いた気持ちにさせるもので、中々良く出来たストーリー展開です。
他の2作品に比すると、それほど華々しさはありませんが、心に響く作品だと思います。
特にリアンの心の描写が、絶妙です。
勿論、絵の構図の素晴らしさや美しさは、相変わらず高い水準で、見る者の心を捉えて離さないことでしょう。
幼稚園位の読み聞かせ、あるいは、小学校低学年であれば、自ら読んで欲しい作品としてオススメします。