チェン・ジャンホンさんの作品と言うことで飛びつきました。
蓮の花は、見ていてとても有り難く清らかな気持ちになります。
仏教では泥水の中から生じ清浄な美しい花を咲かせる姿が、仏の智慧や慈悲の象徴とされていますし、「蓮は泥より出でて泥に染まらず」という日本の言葉からも、清らかさや聖性の象徴として称えられることが多い花です。
そんな清らかな心を持った蓮の花の精リアンが主人公。
リアンの誕生は、魚がさっぱり獲れなくなった猟師ローおじさんの親切から始まり、親切のお返しに貰った蓮の花の種を湖に植え、リアンが生まれます。
リアンとローおじさんの幸せそうな様子にどっぷり浸っていたら、登場したのが欲望の権化ともいえる権力者。
リアンにより豊かになっても分け与える事を忘れず、最後までリアンを守り抜いたぬローおじさんの心の清らかさが、改めて対照的に浮かび上がってきます。
リアンの持つ魔法の蓮に手を掛け、人間として越えてはならない欲望の境を越えてしまった王の娘タンの姿は、私たちに大きな教訓を伝えてくれます。
欲望の虜になってしまう人間の愚かしさ浅はかさを目の当たりにして、反省させられます。
更なる幸福がリアンとローおじさんに訪れるエンディングに、ほっとしながらもう一度ゆっくり読み直しました。
蓮の花の神々しさが本当に伝わってくる素晴らしい絵でした。
この作品も絵本という範疇を越えた芸術作品だと思います。
大人の方も十分楽しめると思います。